座頭市_DVD_デジタルリマスター版
先週末、時代劇専門チャンネルにてオンエア。私の大好きな映画の1本であり、勝新太郎の「座頭市」シリーズとしては最後の1作ということになると思います。
作品について
今回、「勝新太郎 ディレクターズカット 4K デジタルリマスター版」(オンエア版は、2Kにダウンコンバート)という聞きなれないバージョンでのオンエア。時代劇専門チャンネルによると"約30年前に、フジテレビにて「特別編」と題してたった一度だけ放送された編集バージョン"ということなので、当時TVで見たとしても、劇場版との違いについては記憶に残っていないです。
本作は製作中に、勝新の息子で五右衛門役の奥村雄大の持っていた日本刀(真剣)が子分役の俳優の首に刺さり死亡するという事故が起きて、映画より先にこちらのスキャンダルが世間を賑わしたことは、覚えている人は多いと思います。
【監督】勝新太郎
【原作】子母澤寛
【脚本】勝新太郎/中村努/市山達巳
【出演】勝新太郎/樋口可南子/緒形拳/陣内孝則/片岡鶴太郎/内田裕也/泉谷しげる/三木のり平 ほか
【ストーリー】牢屋を出たばかりの座頭市(勝新太郎)は、漁師の儀助(三木のり平)の家にやっかいになっていた。その漁村では、跡目を継いだばかりの五右衛門(奥村雄大)が、宿場一体を取り仕切るため八州取締役(陣内孝則)に取り入ろうとしていた。五右衛門一家の賭場で大勝ちした市は、一家に取り囲まれるが、女親分のおはん(樋口可南子)がその場を治める。市は帰り道、一家の刺客に襲われるが、得意の居合い斬りで片付けた。そんな市を五右衛門一家と対立関係にある赤兵衛(内田裕也)は、用心棒として雇おうと画策する。一方、五右衛門一家が用心棒として雇い入れた浪人(緒形拳)は、かつて市が旅先で知り合い、絵を教えてもらうなど交流を持った人物であった。(時代劇専門チャンネルより:一部加筆)
感想
4K デジタルリマスター版としては、これまでのオンエア版に比べるとレストアされて絵が格段に明るくなっているという印象でした。全編がそんな感じで、むしろ明るくなりすぎているのではと思うシーンもいくつかありましたが、映像が美しく甦ったのは素晴らしいことです。それにしても鬼籍に入られた俳優陣の多い事、勝新太郎をはじめ緒形拳、内田裕也、三木のり平、蟹江敬三、ジョー山中、安岡力也、川谷拓三等々、時の流れを感じます。それにしても、勝新太郎の存在感、独特の愛嬌とユーモアに溢れたキャラクターは出色で、色んなスキャンダルや不祥事を起こしながらも愛された彼のライフワークとしての『座頭市』がこの一作に凝縮されていると感じました。時代劇そのものが近年減っていますが、本作の殺陣の見事なこと、一見の価値ありです。
■ディレクターズカットのハイライト
厳密にオリジナル版とディレクターズカット版を見比べたわけではないのですが、ところどころシーンが追加されていたり、削除されていたり、編集のつなぎが変わっていたりと気づくシーンがありました。ディレクターズカット版が別エンディングになっているというわけではなく、おそらくはキャラクターの関連性などをより明確にしている部分が多かったと思います。いくつか変わったシーンはあると思いますが、主に気づいたところをまとめました。
オープニングの牢屋の喧嘩・・・市にちょっかいを出した囚人をやっつける(関節外し等)場面のくだりに至る小銭を使った輪投げのシーンなどが追加
市が賭場に入るシーン・・・正面から入るのを断られて奥の隅っこから入るカットになっている
浪人(緒形拳)と五右衛門・・・浪人が五右衛門一家に用心棒として売り込んだ際に自分が描いた市の絵を刀で真っ二つにするシーンがカットされ、五右衛門が浪人に市の始末を依頼して前金を渡すシーンがその後に続く。オリジナル版では前金をもらうシーンは中盤以降の浪人の回想の中で出てくる。
市と浪人(緒形拳)・・・一宿をともにするのだが、その際に宿の1階で二人が飲むシーンが追加されている
村の庄屋衆の殺害・・・五右衛門が村の庄屋たちを殺害するシーンのカットが編集されている
旅の按摩たちと市のすれ違い・・・ラストで市が浪人(緒形拳)を斬った後に旅の按摩たちとすれ違います。彼らは中盤に一度登場しますが、そのシーンは市が牢屋で知り合ったヘタレの反体制派の志士らしき男・鶴(片岡鶴太郎)と茶屋で再会するくだりで、鶴は盲目の彼らの介助役をしていました。ところがラストでは鶴は登場しません。鶴はどこに行ってしまったのでしょうか…という疑問がずっと残りました。これまでは、片岡鶴太郎のスケジュールの都合など何らかの理由でラストのカットに出なかった or 出られなかった等の諸説がありましたが、ディレクターズカットでは按摩の台詞が追加されていて「幕府の悪口を言って捕まってしまった、良い人だったのに」というようなことを言っているので、これは鶴のことを指しているものと思われます。個人的には、このラストの按摩の台詞を加えたことで、これまで疑問に感じていたことの答えとなっているところがいちばん印象的でした。
オンエアとDVD発売など
■時代劇専門チャンネル
3月・4月とオンエアがあります。

■DVDとブルーレイ
DVDは2004年に発売されたデジタルリマスター版が最後です。ブルーレイは海外版が発売されています。
   

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