新宿ミラノ座より愛をこめて~LAST SHOW~��の『時をかける少女』の件で、少し紹介した映画『エンジェル 僕の歌は君の歌』。DVD化されていないので、なかなか視聴するチャンスが少ないのだが、YouTubeでオープニングとエンディングの映像を見つけたので、しばし楽しむことができた。この映画の最大のポイントは主題歌で使われているエルトン・ジョンの「YOUR SONG」（僕の歌は君の歌）。この曲がものすごく効果的に使われている。おそらくこの楽曲の著作権の使用料とか許諾の問題でDVD発売がされていないのかもしれない。
本作の公開は1992年。織田裕二と和久井映見共演のファンタジックなドラマである。実は、この2人は前年公開の『就職戦線異状なし』でも共演していて、2年続けての共演作品というのは珍しい。折しもまだバブル景気の名残がある頃で、作品にも随所に懐かしい空気が見て取れる。
映画『エンジェル 僕の歌は君の歌』はラグビーのシーンが随所に出てくる。主人公(織田裕二)は大学ラグビーのスター選手(着ているジャージからイメージするに早稲田大学の選手だろうか?)だったのだが、試合中の相手チームの非道なラフプレーを許せずに相手選手を殴ってしまい、その後ラグビーを続けることができなくなり、卒業後の今は普通のサラリーマンとなっている。その後、彼女(和久井映見)とある骨董店の前で出会ってその後2人は恋人関係になるのだが、最初、彼女は彼がかつてラグビーをやっていたことは知らない。知るきっかけとなるくだりは、オープニングで出てくるが、彼が表紙を飾ったラグビー雑誌の古本を偶然見つけるのだ。クリスマスのプレゼント交換で、彼(織田)は彼女(和久井)が欲しがっていた骨董店のアクセサリーを贈り、彼女(和久井)はニュージーランド行の航空券をプレゼントする。2人でラグビーを観戦に行こうという粋な計らいだったのかな。ところが5年付き合った後、結婚に中々踏み切らない彼(織田)のせいで2人は別れてしまうのだが・・・ここでもう一人の主役、“天使”の大地真央が登場。天使といっても、死期が近づいた人間の魂を集めるような仕事をしているらしい。それだったら“死神”だよね。天使(大地)は死ぬことになっている人の写真ファイルを持ち歩いているのだが、偶然、彼(織田)と出会って、彼がそのファイルの中に彼女(和久井)の写真を見つけて動揺する。彼女は、重度の心臓病か何か患っていて(彼女自身はそれを知らないのだが・・・)、実は死期が迫っていたのだ。彼は何とか、その死期を回避すべく、直情的に孤軍奮闘するのだが、時は一刻一刻と迫ってくる。“天使”(大地)は、感情を持っていないという設定。だから泣いたり笑ったりすることを知らない。一度も涙を流したことがないのだ。だから彼(織田)の一直線な彼女(和久井)への愛情にも理解を示さなかったというより理解できなかったのだが、そのあまりに直情的なパッションにいつしか彼(織田)に対して、ほのかな恋心を抱くようになる。ここをきちんと描いているので、ラストがしっかり成立する。
時折、登場する花屋の主人役、三木のり平も大事なエッセンス。実は、彼は先輩の“天使”だったらしいが、ある理由で年老いてしまったというのがミソ。
彼(織田)の直情的な愛情表現も彼女(和久井)には理解されないまま(「お前は一週間後に死んでしまうんだ」と突然言われても困惑するのが普通でしょう)、そのうち、体に変調をきたし始めた彼女自身も死期を悟りはじめ、一人、彼と観戦したいと願っていたラグビーを観にニュージーランドへと旅立つ。それを追う彼(織田)。大好きなポンコツの愛車、ワーゲンのビートルを売って旅費に代える。この車も実は物語の大事な場面で登場するキーアイテムのひとつ。試合の終わったグラウンドで出会う二人。そしていよいよ死期が迫って、カウントダウン。“天使”(大地)が魂を引き取りに姿を現し・・・まあここからは予定調和。天使の持つ生命のパワーを分けることで、彼女を助けることができることを天使から告げられるが、代償として二人は出会ってから今までの記憶をすべて失って、知らないもの同士になってしまうのだ。それでもいいと受け入れる彼。実は、人間的な感情が芽生え始めた“天使”は、彼女を助けることより、自分が恋心を抱いた彼が自分自身のことを忘れてしまうことを悔やんでいるのだ。そして、彼女は助かり、今までの二人の記憶がなくなった彼らは、ある日、再び例の骨董店の前で、知らない者同士として偶然再会する・・・エンジントラブルを起こして止まっているワーゲンのビートル(車のカラーは変わっている)。天使は、もう一つの代償として、自身の生命を削ったことで、年老いて人間になってしまったようである。
ところどころ記憶が曖昧だが、だいたいこんな話だったと思う。この作品、日本テレビが絡んでいるが、前年のフジテレビ製作の『就職戦線異状なし』とは違って、それほどメディアミックス色も無く、職人系のスタッフできちんと作りこまれているのが特徴。安直にタイアップソングなどを使わずに、エルトン・ジョンの「YOUR SONG」（僕の歌は君の歌）を使ったことが、ややありきたりなファンタジーを輝かせる効果を与えているのだ。まだ邦画の“良心”を感じさせる映画だった。
和久井映見、20年前はきれいでしたね。当時人気あったのがよくわかる。大地真央は、当時35歳くらいかな。当時の彼女は、ヅカ女優の中では、ヴィヴィアン・リー的な雰囲気を持つ貴重な映画女優顔だったと思います。
なぜ、今頃こんなことを書いているのかは自分でもよくわかりませんが、久しぶりに作品を観てみたくなったのかな。
ちなみに織田裕二は、1995年公開『きけ、わだつみの声 Last Friends』では、学徒出陣の大学生で、確か明大ラグビー部の選手役を演じていましたね。
※DVDなどのソフト化は、2020年になってからもされていません。
※衛星劇場にて、2019年秋にオンエアされています。
コメント
コメント一覧 (19)
とてもいい映画だった記憶があるんですが、細かい内容は忘れてしまいました。
ひさしぶりにスマホで検索し、このサイトに辿り着きました。
映像見れて良かったです。
こんにちは。コメントありがとうございます。
このようなメッセージをいただくと、このコラムを書いて良かったと思います。
この映画は、DVD化されていませんが、昨年WOWOWでオンエアされました。
物理的に視聴可能な環境にはなりつつあるので、今後のオンエアなどに期待したいと思います。
昔この映画を観たのですが、
すっかりストーリーを忘れてしまっていて
your songを聴く度に、
苦しくなっていたのですが。
おかげで少しすっきりしました。
死ぬまでに、いつかもう一度観る機会があれば
うれしいのですが。
このブログを書いてくれて
ありがとうございました。
貴重な情報をいただきありがとうございます。
WOWOWに加入していないので、気づきませんでした。
早速、当ブログにてオンエア情報としてアップしたいと思います。
大切な思い出の映画ということで、ぜひオンエア版も大事にされてください。
私もこの映画が大好きです。正直もう20年以上前の記憶ですが。
もう10数年前だったかと思いますが、スカパーで織田裕二の特集をやっていた時に
録画したはずだったのですが、ディスクに焼かずHDDに入れていたままで、そのまま機械が・・・
BDやDVDの発売を待っていたところ、先日WOWOWで放送しようやく見ることが来ました。
再放送が2月19日にもやるようです。
この映画は亡くなった妻との思い出の映画なので、本当に見ることができ良かったです。
LDを所有されているということで、宝物ですね。
今の邦画のような番宣の連発で仕込んでいくメディアミックス的な感じではなかったですが(日テレは絡んでましたが)、地味に映画館で流されていた予告編から、映画の良さが不思議と伝わっていた作品だと思います。
何年も『エンジェル 僕の歌は君の歌』のＤＶＤを待ち続け、とあることからまたＤＶＤを探してこちらにたどり着きました。
当時邦画あまりは見ないのですが、何故かこの映画は見ていたのでした。
エルトン・ジョン曲とＣＭの織田さんの「お前死ぬんだよ！」と言うセリフが印象的でした。
愛車のエンジン起動に縁起担ぎをしたりダメな所も含めて色々な部分が当時の自分と重なっていたこと好きな理由の一つです。
ラストシーンは特に、骨董品屋の年老いた女性が涙を流すことで、涙を流すことのなかった天使が涙するところがまたなんとも言えず涙を誘います。
ちなみにYouTubeオープニングの前にある映画の出だしはオルゴールで主題歌がかかり骨董品屋の中でラグビーをしている時代の織田さんのアルバムをめくり、既に消えた記憶の織田さんと和久井さんの二人の写真が映るシーンがあります。
そこからラストの骨董品屋さんにつながっているのです。
ＶＨＳよりは綺麗なレーザーディスク（若い人は知らないでと思います）を持っていて部屋の片づけをしていて発見したのです。
さすがに５２インチのテレビで見ると厳しい映像ですが。
また、ゆっくり見るとしましょう。
コメントありがとうございます。
おそらく主題歌の権利問題でDVD化が難航しているものと思われますが、なんとかTV放映やDVD発売が実現してもらいたいものです。
オープニングの花屋は"元"天使の老人のお花屋さんですね。天使で始まり天使で終わる、よくできた映画だと思います。
そう確か、織田さんに、恋心を持つ天使役が、大地真央さんだった！
織田さんの、恋人役が誰か思い出せなくて....和久井映見さんだったんですね。
スッキリしました！
DVD出ないですかね(;´･ω･)しっかりみたいです！
シンプルですが、とても良いストーリーなので、しっかりと映画を作ることのできるスタッフならば素敵なリメイクもあるかもしれません。
ただ時代設定の難しさ、SNS時代の現代や若者の恋愛観の変化などをどううまく脚色し直して作れるか。あとは絶対に欠かせないであろうエルトン・ジョンの主題歌を使えるか、このあたりのハードルを超えられるといいのですが。
キャスティングはとても難しいです。25-30歳くらいで、ベタな役をできる俳優。今の邦画界では見つけるのが至難の業です。いっそのこと五郎丸にやってもらうのもアイデアです。きちんとレッスン受けるのが前提ですが。
あとはオリジナル版のキャストで、その後の3人を描くストーリー。こちらも面白そうです。
作品的には複雑な権利が存在するとは思えないですが、楽曲使用に関して当時のTV放映とビデオレンタル商品までしか使えないような契約になっていて、その後のDVD商品はエルトン・ジョンの曲が使えないとか(高額の契約更新の費用が発生してしまうケース)…あるのかもしれませんね。『悪霊島』のビートルズの曲のケース(結局ソフト化の際に使えなかったので、後に他のアーティストのカバーに差し替えてDVD化)に少し似ています。
この作品の良いところは"余韻"かなと思います。最近の邦画のように無理矢理、観客を泣かせようとするような演出ではなく、観る側の受け取り方の多様性にしっかりと配慮している作風が素晴らしいと思います。
DVD発売されていないので、ご所有のビデオ、宝物ですね。
今時の邦画にはない、しっかり作られたファンタジーだと思います。
命を削って人間になったエンジェル、知らない者同士で再会した2人、エンジェルが起こした奇跡。エンディングの余韻とエルトン・ジョンの主題歌のマッチングは、秀逸ですね。
私もこの作品ものすごく好きで、ビデオでは持っているけどものすごく画像が悪く、DVDが欲しくて探していました(*T_T*)
この作品すごくいいですよね♪( ´▽｀)
ラストシーンかなりかなり感動しました♪( ´▽｀)
そうですよね... VHSで探してみます。
見つかるといいのですが。
でも、ご丁寧にありがとうございました！
彼がラグビー選手だったなんて素敵ですね。
残念ながら当作品はDVD化されていないので、本編を入手できる手段としては、
��VHSビデオの中古を購入する
�▲譽鵐織襯咼妊�をTSUTAYA等で在庫している店をあたって借りてダビングする(VHSからDVDにダビングできるサービスを利用してDVDで保存する)
��いつか放映するかもしれませんので、BS/CS等のオンエア情報を常にチェックする
ということくらいしかないのかと思います。
お力になれずにすいません。
僕の歌は君の歌の映画を探して、こちらに辿り着きました。
ラグビーをやっていた彼がどうしてももう一度観たい映画だと言い、DVD を探していたものの全く見当たらず、ずっと私も観たいと思っています。
映画の始まりとラストシーンをこちらで見られただけでも有り難いですが、全シーンを見ることはこちらでは無理でしょうか。