バベットの晩餐会 HDニューマスター [DVD]
ステファーヌ・オードラン
紀伊國屋書店
2011-11-26


心洗われる感動の映画である。
1987年のデンマーク映画であり、アカデミー賞最優秀外国語映画賞に輝いた名作。
19世紀後半のデンマークの小さな漁村。プロテスタント牧師の父を持った姉妹の下へ、パリ・コミューン(パリ市民による自治政権)により父と息子を亡くした女性バベットが移り住んでくる。月日は流れやがて、知人にもらったクジにより一万フランを得たバベットは、その金を使い村人たちのために晩餐会を開く……。
敬虔なプロテスタント故に質素な生活を信条とする村人たち。美しい姉妹はうら若き頃求婚されるものの、村にとどまり未婚のまま年老いて今は村人たちの世話をしている。村人たちも年老いて、気が短くなりささいな諍い事が増えて、コミュニティに不和が生じ始めている。
そこにバベットがフランス料理をふるまいたいと申し出る。敬虔で質素な暮らししかしていない村人たちは、不安と疑心暗鬼で困惑するが、その素晴らしい料理の数々に癒されて、いつしか不和も消えていく。
娘の一人にかつて求婚し、叶わずにずっとその愛情を心に持ち続けた将軍が料理の素晴らしさを語るストーリー・テラーの役を演じていて、それがふるまわれる料理の素晴らしさを観る側に伝える。
時代を超えて再会した年老いた娘と将軍。恋は叶わなかったが、伏線として姉妹のラブストーリーがとてもよいエッセンスとなっている。
そしてバベットの作る魅力的な料理の数々は、観ていて素晴らしい。加えて彼女のキリっとしたたたずまい、手際の良い調理は映画史における料理シーンでは屈指の好演だろう。
この作品には思い入れがある。かつて仕事でMGM作品の旧作を掘り起こしていたが、90年代以降MGMはMGM/UA作品以外にも倒産したOrionやポリグラムその他海外のコンテンツを数多く保有して、映画ファンとしては宝の山だった。
膨大な作品と権利リストを調べていたとき本作を見つけて日本で発売する権利があることがわかった。ただ権利があるというだけでは簡単にDVD発売できない。P/L的に黒字つまりペイできなければ、趣味になってしまう。その時点で日本で発売していた会社をあたり権利切れによるマスターの回収ができればそのマスターを継続使用することで製作費を抑えることができてラッキーなのだが、残念ながら当時の会社にマスターは無く(MGMに返したか、廃棄したか)、結果MGMに新しくマスター制作を依頼したのだが、色んな事情で却下されて頓挫してしまった。
あれから5年の時を経て、他の会社から晴れてDVD発売の機会を得て、この作品が再度日本で発売されたことは素直に喜びたい。
そんなMGMも今年で90周年との事。
MGM